大事な車を守るには、とりあえず車両保険に入っておけばそれで安心、と思っていませんか？
車両保険は特約がないといざという時に発生する費用をまかないきれない場合が多く、特約の有無が重要になってきます。
保険全般について同様のことが言えますが、車両保険では特に保険内容を知ることが大事なのです。
そこで、ここでは車両保険における保険価額の考え方や、目的に合った特約の選び方などについて説明します。
車両保険で費用全額が払われるとは限らない
例えば、車が自動車事故によって全損してしまったとします。あなたはそれを機に新車を購入したいかもしれませんし、車に愛着があるので大がかりな修理を希望するかもしれません。
ですが、事故車の年数にもよりますが、通常の車両保険で希望を満たすような保険金が下りることはほぼ望めないのが現実です。
基本的に、車両保険の支払額を算定する基礎となる「被保険車の価値（保険価額）」は、保険契約・更新時におけるその車の時価(＝中古価格)です。
当然、1年ごとに古くなり保険価額は減少し、それに伴って支払われる保険金も減っていきます。
そのため、大規模な修理の費用や同一グレードの車への買い換えをカバーできるほどの保険金は、契約1年目でない限り下りることはないでしょう。
契約上の保険価額と修理・買い換えに必要な額との乖離は、高級車やカスタムカーなどで特に顕著となります。
十分な保険金が下りない理由は？
契約者からすれば高額で大事な車だからこそわざわざ車両保険をかけるわけですから、事故時に十分な保険金が支払われないのでは納得がいかないと思います。
それでは、どうして修理費や買い換え費用とは直接関係のない「車の時価」が保険金算定の基準となるのでしょうか？
それは、保険全般において「利得禁止の原則」があるからです。
保険商品が不法行為等を誘発しないために守るべきとされている大原則の1つで、自動車保険以外でも広く遵守すべき事項とされています。
簡単に言えば、古い車や安い車に高額の保険価額を設定できるとわざと事故を起こして儲けようとする人が出るから、そのような保険価額の設定はダメですよということですね。
ですので、使途が制限されない保険金としては、あくまで車の時価を上限として支払われることになるのです。
保険価額以上の費用は特約でカバー
このように、通常の車両保険で支払われる保険金は基本的に被保険車の時価（＝中古価格）相当までです。
ですが、確かに必要な実費に充当されるのであれば、それ以上の保険金が支払われても利得禁止の原則には反しません。
ですので、保険価額を超える費用については、実費の範囲でカバーできる特約を用意している自動車保険があります。
具体的には、以下のような特約が存在します。
車両全損修理時特約
全損した車両を修理したときに、修理費が保険価額を超えた範囲において、一部または全部を補償する特約です。
基本的に車が全損した場合は修理費が保険価額を上回ることがほとんどなので、通常の車両保険で修理費が全額まかなえることはまずありません。
ですがこの特約が付いていれば、保険金と修理費の差額の一部または全部が補填されるため、愛着のある車を修理して乗り続けることが可能になります。
前述の通り、この特約は実際に修理を行った場合のみに適用されます。
車両新価特約（新車特約）
こちらは新車を買い直すための代金を補償してもらえる特約です。
新車購入後まもなく全損事故に遭ってしまった場合など、高い修理費を払うなら買い換えてしまった方が気分的にも経済的にも好ましいことがあります。
そういった場合、こちらも実際に新車に買い換えることを条件に、その費用を負担してもらうことができます。
ちなみに、再取得費用以内であれば修理費に充てることもできますので、新車以外でも時価と修理費の乖離が大きい年季の入ったカスタムカーなどにも有効です。
代車費用をサポートする特約も
また、車が損壊したときに必要となるのは修理費や買い換え費用だけではありません。修理や納車がされるまでに足がなくなると困るという方も多いでしょう。
そんなときのため、代車費用をサポートする「事故時代車費用特約」というのもあります。
細かい特約だと思われるかもしれませんが、特に地方在住で車がないと通勤や買い物にも支障を来す場合は結構重要な問題です。
特に修理を選ぶ場合は期間が長引くと代車の費用もかさみますので、特約でカバーできればそれに越したことはありません。
車両保険は特約までしっかり吟味しよう
車両保険と一口に言っても、新車・中古車・カスタムカーなどどんな車にかけるのかによって、目的や必要な性質が全く異なった物となります。
また、契約者の車への思い入れによっても、とりあえず足として使えればいいのか、愛着ある車と添い遂げたいのかで、必要な保険内容は異なるわけです。
実際のところ、特約無しの車両保険はそこまで万能でオールマイティな保険内容というわけではありません。
特約というとオプション的な細かい内容と思われるかもしれませんが、車両保険に関しては特約まで含めてメインの保険内容と考え、しっかり吟味することをお勧めします。
